呂洞賓は中国の八仙のひとりに数えられ、民衆から絶大な尊敬を集めていました。仙人の伝説を集めた『列仙伝』には、本作と同じく軍配を持ち背中に剣を担ぐ姿が確認できます。
画面左上にある「若冲居士が図する所 維明これを證する」という言葉は、相国寺の115代住職で若冲に絵を習った維明周奎【いめいしゅうけい】が、本作が若冲筆である証として書きました。右から左へ吹く風に翻る衣の堂々として力強い墨の線、背景を黒くすることで人物を強調する外隈の技法などから、維明の鑑定どおり若冲が描いたと考えられる作品です。
若冲は絵を学ぶために、京の寺院などに伝来した中国絵画を1,000枚写したとされており、本作はそれらの1枚かもしれません。