蓬莱山は、中国の神仙思想に基づく想像上の山です。山の中には不老不死の薬をもつ仙人が住むとされ、長寿の吉祥画として好んで描かれました。楼閣に注目すると、机に向かう人物と、外を眺める2人の人物が確認できます。雄壮な風景を描いた本作は、春挙晩年の作品。横長の画面を最大限に活かし、墨の濃淡を調整しながら近景・中景・遠景を破綻なく描いています。中景にただよう雲煙はあえて墨を塗り残し、紙の地の色を生かして表現。随所に技巧が凝らされた作品です。山元春挙は滋賀県膳所に生まれ、京都画壇の大家として竹内栖鳳と並び称されました。