水辺に臨む山々の紅葉が「紅で染めるよりも紅」様を描いています。玉堂(1745-1820)は岡山の武士でしたが、琴を好み、文雅の道に生きるために50歳で脱藩し、会津から長崎まで遊歴しました。自らの楽しみのために制作していたとされる絵画作品には、落款に「玉堂酔作」と記された本作のように、酒を飲みながら描いたものが多くあります。横長の画面に、乾いた筆で表されたなだらかな山々が連なり、その山中や手前の水際の木々に赤や黄で葉や点苔を描きこんだ本作は、水墨を主とする玉堂作品の中で鮮やかな色彩が美しい異色の名品です。