モネは1883年から、パリの北西の町ジヴェルニーに転居し、自宅に丹精をこめて庭園をこしらえた。モネは庭園を20年かけて完成させ、「最も美しい自分の作品」と自負している。1900年以後、26年になくなる直前まで、モネはこの庭園のなかに作られた、睡蓮が浮かぶ「水の庭」を主題に選び制作を行う。
これらの作品で、モネは睡蓮の葉の広がりと水面に浮かぶ花によって、鏡のように静かな水面の存在をあらわしている。そして、水面の鮮やかな青色には空の色まで反映され、大胆な筆の動きによって、水中に動く水草と水面に映る柳など周囲の樹木のすがたとが渾然一体となった様子がみごとに表現されている。
睡蓮の池を主題としたモネの作品では、当初、構図のなかで空と池が半々を占めていた。やがて空はどんどん画面の上部に後退し、1905年以降は、画面のほぼ全てを睡蓮の池が占めるようになり、画家の目は水面により接近していく。こうして青と緑、そしてピンクの色彩が広がる画面から、水面に映る空を走る雲、池の周囲にそびえる樹木、そして水流に漂う水草の動きを知覚する働きは、見る人の感覚に、そして見る人の内面により深くゆだねられるようになる。そのためであろう、自然界の静と動のドラマを注視し、ついには生命の神秘にまで迫るような深い内容をそなえたモネの晩年の睡蓮の連作は、個人の内面への洞察を深める20世紀の芸術家に、とりわけ高く評価されている。
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