1981年に山本耀司(Yohji Yamamoto)は川久保玲(COMME des GARÇONS)とともにパリ・コレクションに登場し、「ジャパン・ショック」などと西洋の構築的な服作りから反するように受け取られたこともあるが、この頃、山本はいま継承すべき技術として「テーラー」と「クチュール」の2つを挙げている(『通産ジャーナル』1988年4月)。テーラードとは紳士服仕立ての服という意味であり、本来個々の身体に沿わして仕立てられた、いわゆるスーツ・スタイルをさす。本品はこのスタイルを借りているが、襟と右前裾につけられた茶色の皮革、アシンメトリーの裾丈や、パンツの片側に附けられた巻きスカート風の大きなパネルなどが施されている。本品は西洋の伝統的なテーラードに再解釈を試みた、80年代後半のYohji Yamamotoらしい作品のひとつであるといえる。なお山本はこの年にはじめて、毎日ファッション大賞を受賞している。