ポワレの仮装パーティー「千夜二夜」で着られた貴重な作品。一夜のための衣装とはいえ豪華である。男性服は英国人作家、ハロルド・アクトン卿の父で美術コレクターのアーサー・アクトンが着用したもの。ポール・ポワレは20世紀のファッションの方向を決定づけたデザイナーとして知られ、同時に「モードのスルタン」と渾名された。折しもバレエ・リュスなどの影響でオリエンタリスムが流行する中、1911年に催された豪奢な宴「千夜二夜」はアラブの説話集『千夜一夜物語』から想を得ていた。スルタン役のポワレ以下、300名の招待客全員が古代ペルシア風の衣装に身を包み、宴席を盛り上げた。この時ポワレの妻ドゥニーズが着用したフープ・スカートとターバンの組み合わせは大きな話題を呼んだ。後にも彼は度々東洋風のパーティーをひらき、アラビア風仮装服を制作している。