雑居地の海岸通から、東に続く居留地の海岸通を描く。中央の小さな突堤はメリケン波止場。港には和船や外国船が浮かぶ。西洋風の建物が建ち並ぶ居留地海岸通の奥にある「伝信機」と書かれた洋館は、明治3年(1870)に神戸-大阪間に創設された電信仮局。馬車・人力車・自転車などの新しい乗物、行き交う外国人や日本人、商談を交わす中国人と日本人が一堂に描かれ、開港場・神戸で新しい時代の息吹(いぶき)に接した絵師の感動が伝わってくるようだ。
絵師の小信(このぶ)(1848-1941)は大阪の浮世絵師で、明治8年(1875)に二代貞信(さだのぶ)を襲名。小信時代を中心に、神戸や大阪の文明開化期の風景や風俗を題材にした開化絵を数多く描き、また、戦争絵や錦絵新聞、輸出茶の商標や引札、芝居番付など幅広いジャンルを手がけた。