第10回福岡アジア文化賞を受賞したタン・ダウは、1980年代末からインスタレーションとパフォーマンスを組み合わせるなど、新しい表現形式を駆使して、シンガポールの現代美術を引っ張り続けるアーティストである。この作品は、漢方薬で解熱剤などの素材として珍重される角を取るため、乱獲され、密猟されて絶滅の危機に瀕する犀を主題にしている。その犀のマークの解熱剤の瓶を使って、今度は逆に犀の角を表すオブジェを作った。漢方薬にしろ、中華料理にしろ、彼は、自己の日常の中の問題をとらえて、日用品を使ったインスタレーションやオブジェで作品に表現し、しばしば観衆の参加を得て発表する。この再構成された犀の角のオブジェも、パフォーマンスやインスタレーションを用いて表現される犀の角をめぐる物語の一部なのである。