ファン・ホイエンは、熱心に風景画の表現を探求した。小さなボートを所有し、それに乗って海や湖に出て、風や太陽の光、水面の見え方の変化を観察している。1625年頃より単色による簡潔で構築的な画面へと作風を変化させ、モノクローム的色彩の風景画へ移行していく。こうした彼の様式が後のオランダ風景画に大きな影響を与えた。
川面の穏やかな流れと遠景の町のシルエットが、詩的な静けさを演出している。前景右では、ボートに乗った三人の釣り人が投網で漁をしている。その左奥には、たくさんの人を乗せて町に向かう小舟が描かれ、そのマストにはオランダの三色旗が掲げられている。
画面の大半を空が占め、低くとられた水平線に垂直に立つ幾本かの帆船マストが、ともすれば単調になりがちな画面にリズムと奥行きのある空間を作り出している。こうした低い視点からみた水平線と広い空という構図は、ファン・ホイエンが生み出した独自のスタイルといえる。
モノクローム的色彩の微妙な色調の変化を重視した作者にとって、光の当たり具合でトーンが少しずつ変化する雲や川面は絶好のモチーフとなった。トーン重視の作風は本作の描かれた1640年代に至って円熟を見せている。