南朝宋の文学者、劉義慶(りゅうぎけい)(403~44)が編集した逸話(いつわ)集で、一般には『世説新語』と呼ばれているもの。『世説新書』は、漢末から東晋にかけての名士の言行と逸事を収録したもので、当時の士族階級の生活ぶりや社会の雰囲気を反映した内容となっている。
これは、その巻第六の残巻であり、「規箴(きしん)」の後半と「捷悟(しょうご)」の全文までを収めている。書写年代は、力強く端正、かつ典雅な字すがたであることや上質な料紙を用いていることから、唐時代でも7世紀と見て間違いなく、唐時代の写本のすばらしさが窺われる優品である。また本文には、朱書のヲコト点・仮名、墨書の書き入れなどもあり、漢籍の訓点資料としても重要な一巻となっている。
長らく、京都・東寺に伝来していたものであり、紙背には、平安時代後期と見られる『金剛頂蓮花部心念誦儀軌(こんごうちょうれんげぶしんねんじゅぎき)』も写されていることから、早くにわが国に将来されたことが知られる。