「描く前には何か想う事もあったが具体化して見ると何も出てこない。こんな構図でもなくこんなポーズでもない。何でもない肝心のものが具体化されぬままに心に残って画面の方にはただマンネリズムな日頃の惰性だけが坐っている」制作当時秋野はこの作品についてこのような言葉を寄せている。裸婦をモデルにしているが、鑑賞的趣味的な傾向を徹底して排し、硬質で力強い表現を狙って描いた作品である。暗く重厚な色調で塗り重ねられた筆遣いには、自分自身の表現を生みたいと試行を繰り返していた画家の制作の苦悩、模索があらわれているようである。