エマニュエル・カーンは1960年代に現れた、プレタポルテの旗手の一人。スモックはもともとは東欧の民衆たちが、ジーンズはアメリカの労働者たちが着ていたものだった。衿もとに多色の木綿糸で風景柄、両袖に花柄、左裾に蝶を刺繍した綿ガーゼのスモックのレーベルには「FAIT MAIN(手作り)」と明記され、ジーンズは腰下全体にパッチワークが施され、手仕事の要素が強調されている。
60年代に発展したヒッピー文化は、男女とも長髪、手工芸的なフォークロア・ファッション、ぼろぼろのジーンズといった反近代的なスタイルを生んだ。それはパリで洗練され、世界に発信され、若者たちのお洒落な日常着として大流行した。なかでもジーンズは階級、世代、性別を超えた日常着として、ファッションに必須のアイテムとして世界にひろがっていった。カーンは、60年代、様々な既成服ブランドのデザイナーとして活躍した後、71年にパリで自身のブランドを設立。手工芸の要素を取り入れたカジュアルなファッションで人気を得た。