榎本千花俊(1898-1973)は東京に生まれ、大正5(1916)年鏑木清方に入門した。同10年東京美術学校日本画科を卒業し、翌年、第4回帝展に初入選。以降、帝展・新文展にモダンライフを謳歌する、いわゆる「モダンガール」を主題とした作品を次々と発表した。
この作品は、第13回帝展に出品された。新しい風俗をアレンジした舞台に二人組の女性を登場させるのは、榎本千花俊が好んで描いたシチュエーションである。ここでは狐の襟巻き、パラソル、撮影機などの目新しい品々と、中国風のスツール、そしてカキツバタやオシドリといった伝統的な日本画の主題が混在し、不思議な空間が出現している。特に目を引くのは、黒いドレスの上に山吹色の羽織を重ね着した女性。同時期のフランスや日本のファッション雑誌に、水着の上に着物をはおる欧米の女性の写真が紹介されている。この羽織風ガウンの流行を知って、作者が独自に空想した光景であろうか。このように流行のアイテムと若い女性とを組み合わせた奇抜な画面づくりが榎本千花俊の特徴で、他に大きなクリスマスツリーの前でヨーヨーに興じるドレスアップした女性二人組(《揚揚戯》島根県立石見美術館所蔵)や、振袖姿でゴルフクラブを振る若い女性なども描いている。