黒一色のミニマルなセット。セーターの衿はトラベリング・ピローのような形状で、袖は上下に分かれ、一部で縫いとめられている。パンツ膝上にはテープ、脚の前面にはファスナーを縫いとめている。ここでも明らかな、服の部分部分を独立させ、それを合体させるという彼のデザイン傾向は、この後より顕著となる。
オーストリア出身のラングは1986年にパリ・コレクションにデビュー。当時の、過剰で前衛的なファッションに対して<平凡さ>を押し出し、理想的な体ではなく、あるがままの体を認める新しいボディ・コンシャスを提示。先鋭性と普遍性を融合させて1990年代のファッションを牽引した。 2002年にはジャケットやベストなどの服の外形の一部を抽出し、それを象ったテープ製の、服のパーツともアクセサリーとも受け取ることの可能な作品を発表。それらはもはや服とは呼びがたく、今にも消えそうな服の痕跡を身体上にかろうじて表しているように見えた。