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餓鬼草紙 第一段

不明12th Century

京都国立博物館

京都国立博物館
京都市, 日本

餓鬼草紙は、六道のうち永遠の飢えと渇きに苦しむ餓鬼道のありさまとその救済、人間世界に出没するおぞましい餓鬼の姿を描く絵巻である。現存する2巻のうち、京都国立博物館蔵の餓鬼草紙は詞・絵各7段からなる。第一、二段は、渇きに苦しむ食水餓鬼が川の水を飲もうとしても鬼に追い払われ、川を渡った人の足から滴ったしずく、人々が亡くなった親の供養のために卒塔婆にかけた水でわずかに渇きを癒す様を描く。
 第三、四段は、仏弟子の目蓮(もくれん)が、餓鬼道に墜ちていた亡き母を救済する有名な説話。第五段は、川の水が火となって飲めない500の餓鬼が仏の力によって昇天する話を異時同図に描く。第六、七段は、仏弟子阿難が焔口餓鬼(えんくがき)を救う話と、救抜餓鬼陀羅尼(きゅうばつがくだらに)による施餓鬼(せがき)の場面を描く。
 これら説話の典拠は複数に亘り、詞書も段によって書風、体裁等が異なる。さらに画風も複数認められ、制作当初は浩瀚な絵巻であったことを示唆する。
 なかでも門前の市の賑わいの中で、目に見えない餓鬼がわずかな水滴に群がる第二段の表現は当時のやまと絵の典型として優れ、風俗画としても、醜怪でありながら、見る者を引きつける不思議な魅力をもっている。

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