明治末から大正にかけて、日本では南蛮趣味が流行しました。本作も、異国情趣への憧れから制作されたものです。長崎を思わせる、船を行き交う港町で、はるか異国から渡来した宣教師と、苦界に生きる遊女が並んで腰掛けています。着物の鹿の子絞りの合間に「夜の」「夢」「はか」「手枕」の文字が見えており、小倉百人一首に所収の和歌「春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなくたたむ 名こそ惜しけれ」を散らし書きで表していることが分かります。春の夜のはかない夢の出来事のように、あなたの手枕を借りてしまったら、ありもしない恋の浮き名が流れるでしょう。それが残念なのです、という意味で、和歌の選択が意味深です。