昭和10年銘のものには男性1252人、翌11年銘のものには女性1396人、合計2648人の名が刻まれた一組の大額である。博多高砂会という老人集団が制作し櫛田(くしだ)神社に奉納したもので、それぞれ88歳と95歳を筆頭に、40歳までの長寿番付という体裁を採っている。
40歳の異称に初老(しょろう)という言葉があるが、福岡でも40歳は重要な人生の節目だった。初老賀(しょろうが)などといって、この年齢を迎えたころに盛大な祝いを行うところ
がある。この日のために積立貯金をし、華やかなパレード、豪華な宴会を楽しみにしている人は今でも少なからずいる。これに42歳の厄年(やくどし)の祝いなども含めればその数は相当数に上るだろう。初老の賀は福岡周辺における人生儀礼のひとつのクライマックスなのである。
そしてこの額は、40歳が老人の域に入る節目の時であることを明確に示している。博多における子供、若手、中年、年寄という年齢区分はこうした年齢制に基づいている。しかし多くの長寿番付では60歳もしくは還暦(かんれき)をもって名を記しており、年寄という年齢区分と長寿という概念が異なるものであることを教えてくれる。
【ID Number1998P08833】参考文献:『福岡市博物館名品図録』