現代日本絵画を代表する画家。1950年長野県に生まれる。1974年東京藝術大学院修了。70年代には、海外のポップ・アートやミニマル・アートの動向に応じながら、ストライプやグリッドの抑制された無機的な表現の版画や絵画を発表した。80年頃からは、油彩による絵画制作に中心に取り組み、装飾的なパターンやボリュームを持った有機的な形態による抽象表現を追求した。辰野の絵画は、いわゆる抽象絵画でありながら、あたかも自然の三次元空間が描かれているかのように感じられる特徴がある。晩年に至るまで、歪んだ楕円や矩形をリズミカルに配した色鮮やかな抽象絵画を描き続けた。
ここでは、大きな画面の中に、サイズが異なるいくつかの円が描かれている。いずれも平坦に描かれていて、円には輪郭線のあるものとないものが混在している。輪郭線を持つ円が前景を成し、持たない円が中景、紫色をベースにしたモネのような筆触で描かれた後景が重なり、浅い奥行きの絵画空間を作っている。また、描かれた円はそれぞれに磁力を有しているかのようで、絵画空間の中を互いに引き合い、反発し合うように、ゆっくりとした動きも見ることができる。