明治時代末からの呉服の需要増加に伴い、大正時代にかけて東京友禅の業界リーダーとなったのは、大手呉服店、つまり後の百貨店でした。日本の代表的な百貨店の多くは、呉服店や古着商として江戸時代に商いを始めています。例えば現在の三越百貨店は1673年(延宝元年)、「越後屋」の名で呉服店としてスタートしました。着物の事情に通じていた呉服店は、やがて友禅の販売のみならず、製作にも携わるようになります。三越は「三井呉服店」時代の1895年(明治28年)、意匠部を設け、日本画家を嘱託で雇い、新柄の開発に努めました。また、1902年(明治35年)には着物の裾模様の図案を一般からも募集するようになります。