西洋画家になることを志した黒田清輝(1866-1924)は、パリでラファエル・コランに師事しアカデミックな絵画教育を受けた。その後、フランス留学時代の最後の2年ほどの間は、グレーという田舎町に本拠地を移して制作に励み、風俗画、人物画、風景画に優れた作品を残している。
グレーは当時、イギリス、アメリカ、北欧などから来た外国人芸術家たちが、コロニーを形成していた風光明媚な場所。四季それぞれに魅力的なグレーの風景は、黒田を惹きつけた。グレーで描かれたフランス留学時代の代表作《読書》や《厨房》のモデルであるマリア・ビヨーは、黒田のアトリエ兼住居の家主の娘だった。
本作品は、このグレーの秋の風景。黄葉したポプラの並木道が、鮮やかな色彩で描かれている。外光派の明るい色彩表現が用いられ、ミレーや17世紀オランダ絵画に惹かれていた黒田の自然に対する感性が表れている。