江戸時代後期の人気作家、曲亭(滝沢)馬琴作、「南総里見八犬伝」の一場面。
時は文明十年(一四七八)の六月。所は武蔵国本郷円塚山のふもと。
すり替えられた、宝刀 村雨丸を、夫 犬塚信乃のために取り返そうとした浜路は、逆に網乾左母次郎に刺されてしまう。
そこへ、浜路の実の兄である犬山道節が現れ、左母次郎を斬り倒す。瀕死の浜路は道節に、本物の村雨丸を夫へ届けることを懇願するが、その望みは聞き入れられず、息絶える。
信乃を送った帰り道、円塚山に現れた額蔵(後の犬川荘助)。村雨丸を取り戻すべく道節と討ち合いになる。
道節は荘助の珠と村雨丸をもって、火遁の術で身をくらます。荘助の手の中には道節の体から飛び出た珠が残る。道節も又、同じ犬士であることを知るのであった。
後に、義兄弟の契りを結び、里見家再興のために尽くした八犬士たち。その姿に、今なお残る、東日本大震災の爪あとからの復興を切に願うものである。