『ジャンプ』の精神を継承する、デジタルの未来図

デジタルプラットフォームの『MANGA Plus by SHUEISHA』が、日本を代表するマンガ雑誌グループから受け継ぐ3つの要素とは?

作成: 経済産業省

© 週刊少年ジャンプ/集英社 ※「MANGA Plus by SHUEISHA」は日本では閲覧できません

週刊少年ジャンプ背表紙 ©週刊少年ジャンプ/集英社出典: 集英社

「マンガ雑誌といえば?」と日本人に尋ねたら、恐らくほぼ全員が「週刊少年ジャンプ」と答えるだろう。それほど大きな実力と影響力を誇るマンガ誌のグループが、満を持して2019年に世に送り出したのが世界向けに多言語対応するマンガのプラットフォーム、『MANGA Plus by SHUEISHA』だ。

『MANGA Plus by SHUEISHA』TOPページ ©集英社出典: 集英社

『週刊少年ジャンプ』や『少年ジャンプ+(プラス)』などの連載作品群の最新話を、日本・中国・韓国を除いた世界で同時に、しかも無料で配信する『MANGA Plus by SHUEISHA』。全世界の読者とともにリアルタイムで連載を楽しめるこのデジタルサービスには、1968年の創刊よりマンガ界を牽引し続けてきた、「ジャンプ」のDNAが息づいているという。『少年ジャンプ+』副編集長で、同プラットフォームを運営する籾山悠太さんが、その証言者だ。

『少年ジャンプ+』副編集長の籾山悠太さん出典: 集英社

「新しく面白いマンガが『ジャンプ』グループの誌面でつぎつぎに生まれてきた秘密は、いくつかあります。『ジャンプ』の魅力や精神、アイディアや仕組みを、今のデジタルの環境で表現するとどうなるか? そんな考えを、編集部が直接運営をしている『MANGA Plus by SHUEISHA』では海外へ向けた仕様に置き換えました」

集英社 ジャンプグループ編集部出典: 集英社

「紙を超えるプラットフォームにしたい、という目標はあるけれど、『ジャンプ』としてそれぞれの長所をいかして、紙でもデジタルでも新しい漫画を生むことが大切ですね」

少年ジャンプ+ 『地獄楽』キャラクター出典: 集英社

では実際に、どんな『ジャンプ』の魅力を、どうやってこの海外向けのデジタルプラットフォームに反映させているのだろう? キーワードは「読者」「新人」「キャラクター」の、3つ。

週刊少年ジャンプ 表紙 ©週刊少年ジャンプ/集英社出典: 集英社

「読者」から届く、愛と激励

まず第1のキーワードである「読者」が意味するものは、「ジャンプ」が大切にする徹底した読者目線。しばしば耳にする「アンケート至上主義」も読者の支持を大切にするという、いわば「ジャンプ」の伝統だ。毎週のアンケートで集計する人気ランキングが下がっていくと、連載打ち切りの可能性が高くなるというシステムは、少し酷な気がしなくもない。

『少年ジャンプ+』副編集長の籾山悠太さん出典: 集英社

「『ジャンプ』系列のマンガ誌で描いてくださる作家さんたちは、承知してくれていると思います。アンケート結果はある意味、読者とのコミュニケーション。支持が得られていないと感じることも、作家同士で競争が生まれることも、実は大切なんです。そんな時こそ才能ある作家さんと、相談相手である編集者が、どうすればより楽しんでもらえるのかを真剣に考えますから。このキャッチボールがあるからこそ、マンガのクオリティが上がっていくと思うんです」

『MANGA Plus by SHUEISHA』コメント欄 ©集英社出典: 集英社

『Manga Plus by SHUEISHA』でも、閲覧数によるランキングを表示。さらに読者が感想等を残すことができるコメント欄も盛況だ。


「作品が世界中で広がっていると、実感を持つことができますね。今は、編集部内でランキングをシェア。さらに日本語に翻訳したコメントを共有し、世界中の読者の反応を部内で共有できるシステムを作っているところです。日本を含め、コメントをそのまま作品作りに反映することはあまりありませんが、作家さんや僕ら編集者にとっても大切なひとつの指標であることは事実」

『MANGA Plus by SHUEISHA』作品ページ 怪獣8号 ©集英社出典: 集英社

「ツイッターをやっている作家さんも多いので、様々な言語で感想やコメントが届くことも。それは作家と編集者両方にとって、力になることです。これからきっと海外の売上や人気の比率が増えていくなかで、海外読者の反応を見ながら作品作りをしたり、色々なプラットフォームを運営していくことはスタンダードになるでしょう」

集英社 ジャンプグループ編集部出典: 集英社

まだ見ぬ「新人」に、夢を馳せて

また2つ目のキーワードである「新人」は、1968年に出版された創刊号から貫かれている「新人発掘」のこと。マンガ誌が多く生まれ乱立していた当時、編集はとにかく未知のマンガの登場を心待ちにしていた。その想いの強さは、創刊号の「第1回新人漫画大募集」の告知に編集長自らによる熱いメッセージが掲載されたことからも分かるだろう。

『少年ジャンプ+』アプリ ランキングページ ©集英社出典: 集英社

「私たちは、一生懸命に新人さんを発掘する編集部だと言えますね」と、籾山さんも同意する。

「マンガ編集者の使命は、新しい漫画を世に送り届けること。将来性に賭けるという面では、他のマンガ誌に比べてオープンかもしれません。例えば人気作である『SPY×FAMILY』は、『少年ジャンプ+』と同時に『MANGA Plus by SHUEISHA』でも連載がスタート。第1話から、外国語に翻訳されているんです。今やコミックスの累計発行部数は2700万部、アニメ化も果たすヒット作となりました」

集英社 ジャンプグループ編集部出典: 集英社

「ジャンプの漫画学校」と題したマンガの創作講座を設けたり、海外の作家さんの読み切り作品が『週刊少年ジャンプ』で掲載されたことも。さらには『MANGA Plus Creators by SHUEISHA』という、マンガを投稿できる海外クリエイター向けプラットフォームも運営しているとか。

「言語などの問題はありますが、個人的には日本と海外の間に差をつける必要はないと思う。最終的にはどんな場所のどんな言語を使う人にも、マンガを描いてもらえたらと思っています。その作品を『MANGA Plus by SHUEISHA』や日本の『少年ジャンプ+』で掲載できる可能性もある。編集者として、架け橋になるプラットフォームを作れたらいいですね」

『MANGA Plus by SHUEISHA』アプリのTOPページ©集英社出典: 集英社

それでは最後に、最後のキーワードである「キャラクター」とは? この言葉は、デジタルへと表現方法を変えても変わらない、「ジャンプらしさ」の要だ。
 
「読者を大切にしているので、連載を追う読者の読みたいものが詰まっているのがジャンプ、とも言えます。でも『ジャンプとは何ぞや』と考えた時、結果的に読者が憧れたり共感するのは魅力的なキャラクターなんですよね。悟空も、ルフィも、ナルトもそう。特に編集部で『魅力的なキャラクターでなければならない』とルールを決めているわけではないですが、きっと意識している編集者は多いと思う」

本棚に並ぶ 週刊少年ジャンプ出典: 集英社

「よく言われる『友情』『努力』『勝利』のスローガンは、今の編集部内では一切使っていません。昔に読者が面白いと思う作品のアンケート結果を見て、重要とされたのがこの言葉のようです。でもキャラクターの魅力というのは、作品を飛び越えて記憶に残る。年代問わずマンガが親しまれている日本と比べ、海外ではまだマンガはコアなもの、というイメージがあると思いますが、どんな人でも『そのキャラクター知ってる』という未来になったらいいなと思いますね」

集英社 週刊少年ジャンプ編集部出典: 集英社

変わりゆくものと、変わらないもの

紙からスクリーンへ。『ジャンプ』から『Manga Plus by SHUEISHA』へ。メディアの形式や掲載言語は変化しても、やはり『ジャンプ』の主人公たちが与えてくれるワクワク感は変わらない。魅力あるキャラクターたちと仲間のように泣き、笑い、知らない世界を冒険する楽しみは、今世界を舞台に旅を始めたばかり。その旅路をともにする未来のファンを、『MANGA Plus by SHUEISHA』は待っているのだ。

提供: ストーリー

※「MANGA Plus by SHUEISHA」は日本では閲覧できません   
協力:
集英社
ジャンプグループ編集部


撮影:安島晋作
執筆・編集・翻訳:大司麻紀子
編集:林田沙織
制作:Skyrocket 株式会社

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。

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