『青衣の女』

Rijksmuseum

青い上着を着た若い女性が、一心に手紙を読んでいます。静寂な主題が、直角に分けられた構図と落ち着いた青と黄土色の色合いにより、さらに強調されています。身近に感じられるこの場面に観る者を引き込みながら、一方で、超えられない距離感が保たれているようにも見えます。女性は誰かに見られていることに気付いておらず、手前に配置された家具が観る者と彼女を隔てています。女性は、ただ自分の世界に没頭しています。この作品においても、フェルメールが光と影の表現を自在に操る優れた画家であることが表れています。この絵画はアムステルダム国立美術館の最初のフェルメール作品で、1885 年から展示されています。


絵の中でさまざまな箇所に用いられている青が、観る者の目に飛び込んできます。女性の上着の絶妙な青だけでなく、

地図掛けの飾り部分や椅子の背もたれといった部分にも青い色が使われています。

フェルメールはこの鮮やかな青色を出すために群青を使用しました。群青は、ラピスラズリを砕いて粉末にした高価な色素です。ラピスラズリは現在のアフガニスタン一帯で採掘され、船でイタリアに輸送されてからヨーロッパ全域に出荷されていました。イタリア語では「アズッロ ウルトラマリーノ(海の向こう側の青)」と呼ばれていました。

手紙
この作品は、手紙というテーマを中心に描かれたものです。女性は両手で手紙をしっかりと持ち、

張り詰めた表情で文面を見つめています。

フェルメールはその手紙の内容を明かさないことで、この女性と手紙の送り主だけがその内容を知っているという、二人の関係の親密性を高めているのです。17 世紀のオランダの風俗画には、こうした場面に恋文がよく現れます。この作品もそういった類のものなのでしょうか。

上着
女性が身に付けている上着は「ベジャーク」と呼ばれる服で、部屋着として着用されるものです。

こうした上着は真っ直ぐな袖を持ち、

ここに描かれているように、正面でリボンを結ぶようになっていました。

婦人が部屋着でいる様子など普通は目にすることはないため、我々が見ているのはプライベートな空間なのです。

この女性が妊娠していると考える人もいますが、このような上着はやや丸みを帯びたデザインが一般的であったため、断言することは難しいでしょう。

静物
この手紙は予期せず到着したのでしょう。部屋着のままでいるだけでなく、朝の沐浴を中断して手紙を読んでいるようです。その日身に付ける宝石を選んでいたかのように、机の上には開いた箱の横に真珠のネックレスが置かれています。机の上には手紙の一部も置かれており、急いで続きを読んでいるのだと想像できます。

地図
壁に飾られているのは、オランダと西フリースラントの地図です。フェルメールは、1620 年代の著名な地図製作者ウィレム ヤンツ ブラウによって作成された実在の地図を描いています。フェルメールは『士官と笑う娘』(フリック コレクション、ニューヨーク)でも同じ地図を描いていますが、若干違いがあります。『青衣の女』の地図のほうが大きく、淡い色で大まかに描写されています。絵の構図に合わせて、フェルメールは静物の形や大きさ、色を自由に変更しました。

白い壁
この作品では、壁の白い部分は単なる背景ではなく、重要な役割を果たしています。壁ははっきりした形で描かれ、構図上のバランスを取っており、この場面の落ち着いた雰囲気の一翼を担っています。

フェルメールの絵画の中では、壁に意図的に重要な役割が与えられています。

X 線検査の結果によって、製作の過程で地図の左側の部分がやや広げられたことが明らかになりました。これによって隣り合う壁の部分がわずかに狭くなり、右の壁との均衡が生まれたのです。

二重の影
光源を見ることはできませんが、太陽の光がおそらく窓を通して左から絵に差し込んでいることがわかります。また、第 2 の光源が存在することが、

地図掛けの飾り部分や左側にある椅子の後ろに見える影の違いからわかります。

こうした複数の影によって壁と物の間に距離感が生まれ、空間感覚をもたらしています。

現実の調整
この絵には、フェルメールが現実を都合よく調整している箇所が他にもあります。地図掛けの飾り部分や左手の椅子は、壁にはっきりとした影を落としているのに対し、

女性にもあるべき影がまったく描かれていないのです。

これは、構成上の要素として光と影を操り、自然に女性に注意が向くようにするフェルメールの技法です。あたかも日常生活を写し取ったスナップショットを見ているかのように感じられるかもしれませんが、実際にはこの場面は綿密に計算されて作られているのです。

青衣の女(c. 1663) - 作者: ヨハネス・フェルメールRijksmuseum

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