歌舞伎のスペクタクル

浅間山噴火の描写技法

是は万代の談柄 音聞浅間幻燈画(明治21年9月10日 1888 ホリ銀) - 作者: 豊原 国周慶應義塾図書館

暗闇の中に、赤い稲妻が縦横に走り、鉢巻き姿の男が睨みをきかせ、3枚の浮世絵が1つの作品として迫力ある構図をつくるこの浮世絵。

豊原国周による作で、歌舞伎演目「音聞浅間幻燈画」の一場面を描いたものです。

是は万代の談柄 音聞浅間幻燈画(明治21年9月10日 1888 ホリ銀) - 作者: 豊原 国周慶應義塾図書館

河竹黙阿弥の作、五代目尾上菊五郎の主演で1888年10月に浅草中村座で初演され、当時人気を博したこの歌舞伎演目は、1888年7月15日に起きた磐梯山噴火の大災害をもとにしています。

磐梯山噴火は明治以来の最初の大災害ということもあり、当時の日本の新しい映像技術だった、写真や幻燈(スライド)などで様々にこの噴火の様子が視覚化され、新聞や写真幻燈会などで人々に広く報道されました。

是は万代の談柄 音聞浅間幻燈画(明治21年9月10日 1888 ホリ銀) - 作者: 豊原 国周慶應義塾図書館

その写真幻燈会に通い強く影響を受けた五代目菊五郎が、幻燈会で見た映像をもとに、当時の有名な歌舞伎狂言作者の河竹黙阿弥とともに、噴火騒動を物語化し、演目名を磐梯山から浅間山に置きかえて作った物語です。

背景には、突然起こった噴火の様子を黒地の背景に赤の線で雷光を表現し、

是は万代の談柄 音聞浅間幻燈画(明治21年9月10日 1888 ホリ銀) - 作者: 豊原 国周慶應義塾図書館

画面の中央に大きく描いたのは、主人公である道中師の初蔵演じる、五代目尾上菊五郎。

袖の模様には、菊五郎を表す意匠である「斧琴菊(よきこときく)」の斧や菊の花、琴の絵がデザインされています。

是は万代の談柄 音聞浅間幻燈画(明治21年9月10日 1888 ホリ銀) - 作者: 豊原 国周慶應義塾図書館

爆風によって、乱れた鬢が細い線と曲線で表され

激しく破れた障子や、折れた柱を描くことで、噴火で一瞬にして人家が押しつぶされた様子が表現されています。

是は万代の談柄 音聞浅間幻燈画(明治21年9月10日 1888 ホリ銀) - 作者: 豊原 国周慶應義塾図書館

左の丸型の枠内には、噴火の光景を見守る人々

菊五郎が見得を切った先の、右側の丸型の枠内には、山が爆発し石や煙を噴く、噴火の様子が写実的にそれぞれ描かれています。

是は万代の談柄 音聞浅間幻燈画(明治21年9月10日 1888 ホリ銀) - 作者: 豊原 国周慶應義塾図書館

この歌舞伎演目の二幕目「信州浅間山噴火の場」では、実際の磐梯山噴火の景色が幻燈(スライド)を使って舞台正面に映し出され、リアルな激しい噴火の様子が視覚的に観客に伝えられたのです。

国周は、その当時としては斬新だった幻燈を使った舞台演出の様子を、円形のコマ枠の手法で描くと同時に、大噴火の混乱の様子を描いた物語を、大胆な色彩と構図で迫力をもって表現しています。

提供: ストーリー

本展示で紹介した浮世絵は、慶應義塾大学三田メディアセンター ボン浮世絵コレクションに含まれます。
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