『天文学者』

ルーヴル美術館のコレクションより

天文学者(1668) - 作者: ヨハネス・フェルメール出典: Agence photographique de la Réunion des musées nationaux-Grand Palais

天文学者が薄明りの書斎で仕事をしています。

椅子から少し腰を上げ…

…机上の天球儀を指先で静かに回しています。

17 世紀には天文学者の絵が多数制作されており、天文学者を描くというのは珍しいことではありませんでした。オランダ黄金時代の経済の基盤である海運業にとって、宇宙の研究は大変重要でした。この作品は、この時代の科学の進歩をも描き出しています。18 世紀初め以降、この絵は『地理学者』とともに何度も所有者が変わりました。そのため、フェルメールはこの 2 点を対になる作品として制作したのだろうと推測されています。いずれにしろ、2 点の絵画は「書斎で仕事をする学者」という主題のバリエーションです。

宇宙への関心
ステンドグラスの窓は、フェルメールが部屋に導き入れた光に柔らかな輝きを与えています。

窓の前にある机の上の天球儀を光が照らしています。

この時代には地球や宇宙への関心が急速に高まり、多くの商人や学者は自宅に高価な地球儀や天球儀を置いていました。フェルメールは制作者を特定できるほど正確にこの道具を描いています。この天球儀は地図制作者で版画家のヨドクス ホンディウス(1563~1612)が制作しました。地球儀と天球儀は常にペアで制作されていました。この天球儀と対になる地球儀は、フェルメールの『地理学者』の背景に描かれています。

アストロラーベ
天球儀の前にはアストロラーベが見えます。この道具は、地平線と関連させて天体の高度を測定する際に使われていました。アストロラーベは航海にも利用されていました。

神聖な啓示
天球儀の制作者に加えて、机の上に広げられた本の著者も特定できます。

これは天文学者のアドリアーン メチウス(1571~1635)が 1621 年に出版した天文学と地理学に関する著書です。本の開かれたページには、メチウス自身が設計したアストロラーベの絵が描かれています。

隣のページのテキストでは、天文学者は「神からの啓示」を探究するべきだと提案されています。

そのような神聖なひらめきがメチウスのアストロラーベの設計につながったのでしょう。前述のように、この道具の実物も机の上に置かれています。

調節可能な星図
天文学者の向こうにある木製の戸棚には、さまざまな円が描かれた興味深い図が貼られていて、影がかかっています。これは星座早見表と考えられます。さまざまな時間帯の星空の様子を表す調節可能な星図です。

有名な学者なのか
この絵の男性は、オランダの著名な生物学者であるアントニ ファン レーウェンフック(1632~1723)だと言われています。彼とフェルメールはどちらもデルフト出身でした。レーウェンフックは歳を重ねるうちに、航海術や天文学に興味を持つようになりました。レーウェンフックの肖像画は、この絵の男性とどこか似ています。しかし、彼がフェルメールのために実際にポーズを取ったかどうかは、はっきりしていません。

より深い意味
フェルメールが極めて正確に描いた道具類に加えて、背景にはもう 1 つ興味深いものがあります。壁にかかった絵には、ナイル川から救出される赤ん坊のモーセが描かれています。フェルメールの『手紙を書く婦人と召使』には、この場面の大きなサイズの絵が描き込まれています。

フェルメールがこの場面をここに描いたのは、モーセが航海と関連付けられているためでしょう。モーセは幼い頃、パピルスのかごに乗せられて川に流されました。後に大人になってから、イスラエル人たちが紅海を渡るのを助けました。

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この展示は、Google フェルメール プロジェクトの一環です。

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