木にもたれ、もの思う女性の表情は、どこか愁いを帯び、沈んだ着物の色調も手伝って、辺りの秋色に溶け合っています。季節としての秋と人生の秋とを二重に背負ったかのような女性像です。青木繁は、東京美術学校西洋画科選科在学中から文学性豊かな作品で画壇の注目を集めましたが、1907年、家を継ぐために志半ばにして郷里久留米へ戻りました。本作品は、この時期に友人の妹早川糸世をモデルとして描かれたものです。しかし、公的な展覧会での発表の機会は得られず、結局青木の中央画壇復帰の道を絶つ結果となりました。この後、青木は家族と衝突して放浪生活に入り、その短い生涯を終えました。