矩形の格子状の静謐な配置を破るかのように、黄、緑、赤といった色彩が華やかに入り乱れています。厚塗り絵具によるうねるような物質感は、静的な画面に躍動感を与えています。「静」と「動」のこの緻密な絡み合いが、本作品の魅力です。ロシア貴族の末裔に生まれたド・スタールは、ロシア革命により母国を追われ、南仏で生涯を閉じた画家です。その画業は主に抽象画によって彩られていますが、1952年以降は、具象的作風へと展開しました。本作品が制作された1951年は、ド・スタールが具象的作風へと移行する直前であり、その意味で本作品は、画家の抽象画の帰結点であるとも言えます。