この魅惑的な作品は、レノルズの後期の作品に見られるファンシー・ワーク(幻想的絵画)の典型といえるもので、このようなジャンルの作品群の中でも、際立って出色の出来映えを示す傑作といってよい。この主題は大変な人気を博し、同一の構図による多くの類作が残されている。
モデルの少女が誰なのかは判っていないが、19世紀を通じて《少女と犬》というタイトルで知られていたようである。田園風景とおぼしき背景に、犬を抱きしめる少女を大きくクローズアップして描いた本作は、肖像画と風俗画の中間をゆくような作品で、ここには同時代の英国作家ゲインズバラとの近似性を見い出すことができる。すなわち古典的な型どおりの肖像画の手法を脱し、自由で親しみやすい作風を追求したもので、本作と似たような子どもの肖像画で、1780年代に描かれた有名な作品に《ヘアのおぼっちゃま》(1788年頃、ルーヴル美術館蔵)がある。