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紫糸威鎧

不明19th Century

京都国立博物館

京都国立博物館
京都市, 日本

 島津斉彬(しまづなりあきら)(1809~58)所用と伝える大鎧。大鎧とは、本来は平安時代から鎌倉時代にかけて使用された上級武士用の甲冑で、基本的に騎馬武者が着用し、馬上からの弓射による戦闘を想定して発展したもの。南北朝以降、戦闘の主体が徒歩(かち)による集団・接近戦になるにつれ、次第により軽量な胴丸や腹巻といった取り回しの良い甲冑にその座を奪われ、鉄砲が伝来した室町時代末期には機能面でこれらを凌駕する当世具足(とうせいぐそく)の出現により実戦で用いられることはほぼ皆無となった。しかしながら、戦乱が終わり江戸時代になると、その格式の高さから大名家などで権威の象徴として新たに誂えられることとなる。
本品も、胴に栴檀板(せんだんのいた)と鳩尾板(きゅうびのいた)を下げ、脇盾(わいだて)・兜・大袖(おおそで)をそなえるといった大鎧の形状を踏襲しつつ、これに頬当(ほうあて)・籠手(こて)・佩盾(はいだて)・臑当(すねあて)など当世具足の要素を加えた復古鎧である。各所に打たれた大きな据紋金具(すえもんかなぐ)は島津家家紋である丸に十字紋で、一説によると、これら錺金具(かざりかなぐ)に施された鍍金(ときん)は日本初の電気メッキであるという。大藩の藩主にふさわしく、細部まで入念に手が加えられた逸品で、鎧としての完成度の高さに加えて、付属品である装束類から幕末期の大名家における復古鎧の理解と認識を知る上で極めて貴重な作品といえる。

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