19世紀末から20世紀のフランスで活躍したアカデミスムの画家、コランは、黒田清輝ら明治の日本洋画壇に新風をもたらした画家たちの滞仏中の師であり、パリの日本人美術商林忠正とも親交厚く、日本と深い縁を持つ画家です。本作品は、彼の1892年のサロン出品作です。柔らかで繊細な光の描写と軽やかな裸婦の表現は、コランの画風の特質です。さらに、儚く華奢な裸婦の描写に、当時のサロン批評家たちは、神話の女神やコルセットで身を細く絞った現実の女性の姿をみてとりました。こうした繊細な外光表現や古典性と同時代性の織りなす典雅な味わいは、コランが求めた芸術世界をよく伝えています。