日本の「チリメン絵」をバッグに使用した興味深い作品。チリメン絵とは皺加工が施された錦絵。刷り上がった錦絵を棒に巻いて揉んで縮め、絹織物の縮緬のような皺を作り出す。1830年代以降から工芸品として日本各地で作られた。江戸時代末期には、来日した外国人の土産物として珍重され、明治期になると輸出用として機械で量産された。また欧文に翻訳した日本の昔噺のチリメン絵を装丁した「チリメン本」も輸出された。
本品は2枚のチリメン絵が両面に縫合されている。絵の作者は、人物画の画面右に「延一画」の文字がみえる明治時代の画人、楊斎延一(1872-1944)。浮世絵の大家、楊洲周延の門人だった。美人画や風俗画のほか、日清、日露戦争などを題材に明治末期まで制作を続けている。
本品に似たバッグのイラストが、フランスの『フェミナ』誌1903年1月15日号別冊に「レティキュール ジャポネ クレポン(チリメン絵の日本のバッグ)」としてパーティー用の小物を特集するページに掲載されている。