『平家物語』に語られる源平合戦の武勇伝やエピソードをもとに合戦を俯瞰的に描写する。右隻は寿永3年(1184)2月7日の一の谷合戦。一の谷合戦は須磨・一の谷から生田の森まで繰り広げられた。初め一進一退だったが、搦手の源義経の奇襲攻撃が功を奏し、平氏は慌てて海に逃れ、討死するものが続出した。
一の谷と屋島合戦の組み合わせは、源平合戦図の中でも典型的なものだが、本図では人物を比較的大きく描きながら、群衆や船団の描写を随所に配置して、合戦のもつエネルギーの表現に努めている。なお両隻には狩野吉信の落款、印章があるが、喜多院所蔵「職人尽図屏風」を描いた吉信と同一人物とは考えられない。