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美人(花魁)

高橋由一1872

東京藝術大学大学美術館

東京藝術大学大学美術館
台東区, 日本

風俗の記録として吉原の花魁をモデルに描いたもの。由一による他の多くの肖像画と同様、写真をもとに描いたという指摘がある。

 由一が西洋画を志したのは、洋製石版画を目にしその写実性に感動してのことである。嘉永年間、ペリー来航の頃であった。画材の手配すら容易でなかった、苦心しながら画技の習得に努めた由一は日本洋画の偉大な先駆者である。本作品の制作年については現在3説ある。髪型の記録として由一に依頼されたものとする説は、娼妓が皆錦絵に描かれる事を望む中、吉原稲本楼の小稲のみがモデルになる事を承諾した、という新聞記事の小稲像と本作品を同一とする立場で、明治5年の作とする。
 フォンタネージとの関係から見ても、表現が平坦かつ装飾的で、西欧の油彩とは異質とし、来日以前の5年となる。近年、技法上の分析からやはり5年説が指示されている。同8-9年説は、本作品と新聞記事との同定が出来ないとし、技術的に5年では早すぎるとの立場である。同10-11年説は、人物の内面にまで迫るリアリズムがフォンタネージの影響によるものとする。いずれにせよ本図は人物、衣裳の物質感を同等に追求していった結果生じた独特のリアリズムである。上記の小稲は出来上った絵をみて自分はこうではないと泣いて怒った、と由一の門人彭城貞徳が回想しているが、西洋的写実の黎明期における肖像画の傑作である。(執筆者:島津京 出典:『芸大美術館所蔵名品展』、東京藝術大学大学美術館、1999年)

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