ナチス・ドイツの秘密兵器「ビッグX」によって鋼鉄の体を持った少年が、悪と戦う巨大ヒーロー・アクションです。
第2次世界大戦中、ドイツに呼ばれた朝雲博士は、ヒトラーから新兵器ビッグXの研究に協力を求められました。
しかし、ビッグXの完成を恐れた朝雲博士は、共同研究者のエンゲル博士と共に、わざと研究を遅らせます。
そしてドイツの敗戦まぎわに、息子・しげるの体に、ビッグXの秘密を書いたカードを埋め込み、ドイツ軍に銃殺されました。
それから20年後、東京で暮らすしげるの体からカードが見つかりましたが、そこへナチス同盟と名乗る組織が現われ、カードを奪って、ビッグXを完成させてしまいます。
ナチス同盟には、エンゲル博士の孫のハンスがいました。
そして完成したビッグXの正体とは、人間の体を途方もなく強く大きくする薬でした。
しげるの息子・昭(あきら)は、ビッグXを取り戻し、世界征服をたくらむナチス同盟とハンス・エンゲルに敢然と戦いを挑みます。
1963/11-1966/02 「少年ブック」(集英社)連載
第2次世界大戦末期、ナチス・ドイツは、現実にロケット兵器V-2号や、超巨大重戦車マウス(Maus)など、奇想天外な新兵器を次々と開発していました。
中には、ロケット戦闘機など、当時、ドイツと軍事同盟を結んでいた日本が、ドイツの研究を引き継いで完成させようとした秘密兵器もあります(実用化はされませんでした)。
そこから手塚治虫が発想して生まれたのが、日独共同開発による架空の秘密兵器・ビッグXでした。
『ビッグX』はテレビアニメ化され、マンガ・テレビ共に大ヒットしましたが、手塚治虫自身は、正義をふりかざすヒーローになり過ぎた朝雲昭に、あまり強い思い入れは抱いていなかったようです。
しかしそんな作者の気持ちとは別に、完成した作品は、戦争の時代を生きた手塚治虫ならではの、戦争の恐怖がリアリティたっぷりに描かれた、戦争風刺マンガとしても一流の作品となっています。