江戸の半ばに、新しい絵画様式を求めていた人々の前に現れたのが、応挙の写生画である。応挙の作品は、写生を元にしながら、装飾性をあわせ持ったわかりやすいものであり、たちまち人々の熱烈な支持を受けた。
応挙が活躍した時代、長崎に渡来した写生画には、沈南蘋(しんなんぴん)による濃彩の細密描写は当時の日本画壇に衝撃を与えていた。本作品は、その箱書に大徳寺狐蓬庵(こほうあん)に伝来した沈南蘋の作品を模したとあり、確かに他の応挙作品には見られないような画題であることから、注目に値するものといえよう。
画面左から延びる枝の中ほどにとまるインコは、応挙の描くものにしては珍しく鋭い目つきをし、金泥や朱によって鮮やかに彩られている。しかしながら南蘋派の特徴とされる質感表現には乏しく、むしろ、雨で打たれもしたか、しっとりと葉と垂れる杉枝になじむような、抑えた表現がなされている。とたえ箱書のとおりに本作品に南蘋あるいはその流派の原画があったとしても、本作品は、応挙ならではの感性が色濃く反映されたものととらえられよう。