火中して黒色となった小さな菩薩像だが、非常に装飾性が高く、白鳳仏に特徴的な細部デザインが盛り込まれている。
わずかに右足を引いて蓮華座上に立つ菩薩像。三面頭飾の正面には釘2本が残り、本来は化仏坐像がついていたものと思われる。天衣をかけ、掩腋衣をつけ、裙をはく。そのうえに幾条もの胸飾りや瓔珞を垂らす。胸飾りや瓔珞は連珠文で、衣縁や蓮弁の縁は複連点文で装飾する。本体・蓮華座まで一鋳とし、像内は頭部まで空洞となっている。火中したため、表面は荒れており、鍍金は認められない。頭飾や胸飾、腹部の花形飾りの意匠も面白く、また、光背に隠れてしまう背面にも、後頭部に結ばれた帯や、腰上の花形飾りなど、手抜きをしない丁寧な作りがみられる。蓮華座受花に刻まれたパルメット文は法隆寺伝橘夫人念持仏にも認められるものである。(執筆者:高瀬多聞 出典:『芸大美術館所蔵名品展』、東京藝術大学大学美術館、1999年)