ナイロン・ネットのプルオーバーにはセーターの網目を、トリコットのカーディガンには皺のよったシャツをプリントしたセット。現実の触感と、プリントから呼び起こされる記憶の中の質感が生みだすずれを意図した、マルジェラらしい作品。
ベルギー出身のマルジェラは、1988年にパリ・コレクションにデビュー。古着を新しい服に再構成した作品は、新しいものを絶え間なく生みだすファッション・システムに異議を唱えるものだった。既成概念への安住を拒み続けてきた彼の姿勢を決定する重要な指針の一つとなったのは、川久保玲など、80年代、世界に注目された日本人デザイナーたちの方法論であった。