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花園に遊ぶ天女

橋本平八1930

東京藝術大学大学美術館

東京藝術大学大学美術館
台東区, 日本

自然の素材を生かし、そこに独自の精神性の表現を試みた平八らしい構成の豊かさと刀鑿の妙技が、この像に充実した存在感を与えている。

 伊勢に生まれた平八は神秘性の強い宗教的感情と詩精神を持ち、そうした自己の意識と世界観が投影された独特の雰囲気をもつ木彫作品を、十余年の短い間に数多く残した。この作品は第17回院展出品作で、膝を少し曲げ小首を傾けて耳をすます少女の肌には、一面に花びらと蝶が線刻されている。台座の周囲には、<樹神><風神>など13の自然神の名が刻まれており、平八独自の造型感覚と観念的発想が、全裸の少女を「天女」という超越的存在の表現にまで高めて、見る者を幽玄の境地にひきいれる。木の「実在性」にこだわった平八は、干割れを恐れずに、あえて木芯を軸にして、木本来の円筒の形や量に沿った造型を試みているが、こうした空間的、構造的な制約との格闘が、この像の危うい安定と緊張感を生み出している。なお当初は、老樹をかたどった木彫が、少女の背後にからみつくような形でとりつけられていたが、展覧会終了後、作者自身によってはずされたという。(執筆者:横山りえ 出典:『芸大美術館所蔵名品展』、東京藝術大学大学美術館、1999年)

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