樹木は洋の東西を問わず、神・宇宙・生命(豊饒)の象徴として、祭祀具や儀式用の布などに表現されてきました。このスマトラ島ランプンの壁掛も、婚礼など重要な通過儀礼に用いられます。三角の山に根を下ろす生命の樹は、インド染織の影響を感じさせます。縁取りの花唐草文様は中東が起源であり、赤い毛織物はヨーロッパからもたらされたもの。赤と黒の組み合わせは、中国文化を思わせます。三角のプチュック・ルブン(竹の子文様)は、インドネシア起源です。この壁掛1点で、さまざまな文化が、交通の要衝であるスマトラ島で融合したことを示す興味深い作品です。