本作は、源氏物語の第1帖「桐壺」から第36帖「柏木」までのうち、28場面の絵のセットである。当初は54帖分が揃っていたのだろう。
その表現は光吉の様式が少しアレンジされたもので、体に比べて大きめの頭や、額と頬が丸く張り出した顔、ピンクや水色などパステル調の明るい色調など、愛らしさが増している。モチーフはストーリー上重要なものを残して整理され、分かりやすさが重視されているようである。また、「土佐久翌」印が押された作品には見られない銀箔が使用されており、光吉様式より装飾性が進行している。
京都国立博物館蔵「源氏物語画帖」のうち裏面に「長次郎」の墨書がある六面の絵と画風が共通し、本作は、光吉没後に長次郎という絵師の様式で制作されたものと考えられる。