古林清茂(くりんせいむ)は、中国元時代を代表する禅僧の一人です。古林は、禅宗の世界に「偈頌(げじゅ:悟りの心を歌の形であらわした文)」を主とする文芸的要素を取り入れたことで知られています。晩年は金陵鳳台山・保寧寺の住持となり、晩年を過ごしました。日本からも、筑前出身の石室善玖を初めとして、多くの留学僧が古林のもとに参禅したことが知られています。本墨蹟も、書き出しに「万里迢々鳳台到(万里はるばる保寧寺に到る)」とあるように、日本から参禅した留学僧に書き与えたものです。蘭渓道隆系の曇幽禅人という僧が、修業を終えて帰国する際の、いわば師からの「卒業証書」です。その時古林は六十五歳、晩年に当るにも関わらず、強靱かつ伸びやかで豊かな書風を示しています。古林の書のなかでも代表的な作品のひとつです。