螺鈿と漆絵を併用して、花鳥が精緻に描かれた盒子です。毛彫りを施した細やかな螺鈿技法で主な部分を表現し、輪郭や岩などには金漆を、竹葉や天苔には彩漆を用いています。器の最上部の天板には地上に憩う番の鶏と雛の姿を、その下の斜面部には鷺や鴛鴦、鴨が群れる蓮池の水面、さらにその下の側面には魚や蟹、藻など水中の様子を描いています。器形と地形を一致させた、心憎いモティーフ配置です。文様の構成、モティーフ、技法から漆工芸が最高に発達した元時代の作と考えられますが、そのなかでも保存状態が極めて良い、貴重な作例です。