20世紀最大のデザイナーとされるイヴ・サンローラン(1936-)。彼は、1957年にクリスチャン・ディオール急逝後、21歳という若さで名門ディオールのメゾンを引き継ぐ。61年には独立し、「モンドリアン・ルック」「ポップ・アート」等アートに着想を得た衣装を発表し、反響を呼ぶ。女性服に男性服の要素を取り入れたユニセックスな服の提案、大量消費社会を先取りする既製服の「リヴ・ゴーシュ」の発表など、20世紀ファッションに与えた影響は計り知れない。
サンローランは、その豊かな発想の源を、あらゆる領域に求めた。北アフリカのアルジェリア生まれの彼は、幼い頃よりアフリカの太陽と色彩に魅せられており、モロッコのマラケシュに別荘を購入したのを機に、同地を頻繁に訪れるようになる。そこでの暮らしにインスピレーションを得たモティーフが、自身の作品に反映されることとなった。1967年春夏のコレクションで、ビーズ等をふんだんに用いた「アフリカン・ルック」を発表し、熱狂をもって受け入れられる。本作は、「アフリカン・ルック」の次のシーズンに発表されたもの。ピンク、黄色といった色鮮やかなビーズを自在に用い、黄色のオストリッチ・フェザーを贅沢に用いた豪華なイブニング・ドレスはエレガントであるが、一方で当時のヒッピー・ムーブメントからの影響も見てとることができる。