東京美術学校金工科彫金部研究科修了。在学中に帝展に初入選。以後、文展、日展、国画会展に出品。戦後は新匠会、伝統工芸展等に出品。日本工芸会会員。1978年重要無形文化財(彫金)保持者に認定される。技術偏重の職人芸の世界から創作としての金工を確立した先駆的な役割を果たした。
面と線の構成による明快なデザインに理知的な感性を感じさせるこの作品の造形のポイントは、渋い銅の地肌に蹴彫によって力強く刻み込まれた幾何学文様です。蹴彫は、くさび形の鏨跡を連ねて線に見せるという伝統的な線彫りの技法ですが、内藤は、日本や中国の古典の研究から自分流の方法を開発しました。一気に刻まれた線には見られない独特の味わいを持つとともに力強い線になり、この作品にも見られるように文様を明快に浮かび上がらせる効果があります。技巧のさえを誇示するような作品の多い伝統工芸の中で、こうした彼の作風はひときわ近代的な感覚を見せるものでした。虚飾を廃した淡々とした制作ですが、上品な品格があります。