1877、78年頃のルノワールの人物画の例にもれず、本作品でも衣装のレースや布地などの質感が緻密で微妙に変化するタッチの集積によってあらわされている。なかでもひときわ目を引くものは、ルノワールが「私が好きなのは肌だ。ピンク色で血のめぐりのいいのが見える若い娘の肌」と語った少女の肌である。少女の頬には透明感のある線状のタッチが下の色を透かして見せながら重ねられ、あたかも内側から光を発しているかのような効果を示す。描かれてる二人はモデルのマルゴと、ルノワールの弟エドモンである。同じ時期にマルゴが本作品と同じポーズをとった、より大きい単独像があり、この作品はそのヴァリエーションである。人物画を最も得意としたルノワールは、親しい友人たちをモデルに群像やカップルの間の親密なコミュニケーションの場面を好んで描いており、エドモンは、ルノワールのパトロンであるシャルパンティエ家を飾る76年作の2点1組の装飾画でもモデルとなっている。マルゴは75年からルノワールのモデルになり、《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの日曜日のダンス》(1878)、《帽子店にて》(1878)、《ショコラのカップ》(1878)などのモデルをつとめた。ダンスやおしゃれに興じ、洒落た居間でくつろぐ当時のパリジェンヌの生きる喜びこそ、ルノワールがこまやかに感じ取り、また、いかにして描くか探求し続けた対象に他ならない。