邸内の縁先および庭先で遊楽に興じる女性たちを描く。右図は縁先で三味線を弾く女性と、下方に長いきせるで煙草を吸う女性と紅白の花を手に寄り添う女性が描かれ、両者は同じ先に視線を投げかけている。一方左図には、庭先で赤い糸に結ばれた小鳥をあげ、手を出し背伸びをする子供と女性、上部には扇を手に岩にもたれる女性が描かれ、三者とも小鳥に視線を向ける。女性の顔立ちは特徴的で、ふくよかな頬と長い顎の表現は、「豊頬長頤」とよばれる岩佐又兵衛の人物描写に近似して、弓なりの立ち姿などからも又兵衛周辺で制作された可能性が考えられる。
左右の画面は連続性がなく、不自然な表現や紙継ぎが認められることから本来大画面であったものを改装したと見られ、余白部分の金銀箔にも後補がある。禿を除く四人の女性は兵庫髷を結い、丸紋や蝶、松皮菱などの大柄のデザインの着物や狭い帯を身につけるなど寛永期の美人風俗画の佳品である。