手縫いのピン・タックが筒型の身頃全体に施されている。一見すると単純だが、今日では再現不可能なオートクチュールならではの精巧な手仕事によって実現された。ピン・タックは装飾性と機能性を兼ね備えたものとして用いられている。ここに、「シンプルであるということは、複雑なものをすべて含んでいる」と語ったヴィオネの衣服制作の真髄を垣間見ることができる。早くから身体の解放を目指していたヴィオネは、日本の着物の直線的な形態に啓示され1910年代後半から着物の構造に目を向けた衣服制作を展開し、女性の身体性を新たな解釈で際立たせる衣服の新しい構成概念を打ち立てた。1920年代のヴィオネの頂点を成す記念碑的作品である。