ドレスのシルエットの変化が著しかった19世紀後半、1860年代末から80年代にかけてバッスル・スタイルが流行した。臀部がはり出すこのシルエットはバッスルと呼ばれる下着を用い、さらにオーバースカートの後ろ部分をたくし上げて臀部にボリュームを出す。80年頃にはいったん臀部のはり出しが小さくなるが、80年代半ばにかけて再び臀部が大きく膨らんでいく。
当時の欧米社会において、生活にゆとりができた人々は戸外でのレジャーを楽しむようになり、ファッションは一般的な庶民までもが享受できるようになった。そこで着られたのは本品のような太陽光に映える薄く透けたオーガンジーやターラタン製のドレスだった。
印象派の画家は「モデルニテ(近代性)」の表象として数年ごとに目まぐるしく変わるシルエットを鮮やかにうつし取っている。オーギュスト・ルノワールは《ぶらんこ》(1876年/オルセー美術館蔵)で、本品と類似のドレスを着た女性を描いた。
[参考]
オーギュスト・ルノワール《ぶらんこ》(1876年/オルセー美術館蔵)
http://www.google.com/culturalinstitute/asset-viewer/ywHQ_VpAHNNDMg