フランス留学を終えた1985年から、キムスジャは伝統的な韓国布をまるで抽象絵画のように縫い合わせ、彩色を施した平面作品を制作したが、89年以降は布のもつ可変的な特性を利用し、様々なインスタレーションを行っている。本作品では新婚用のベッドカバーを床に敷き、その上に引っ越しを連想させる風呂敷包み(ポジャギ)を置くことで、家庭・定住と別離・移動が示唆されている。題名が「演繹的オブジェ」とあるように、作品世界は韓国布のもつ一般的観念とその視覚的な抽象性から出発し、見る者の記憶、あるいは現実の様々なイメージへと拡張していくのである。