肥前鍋島藩の藩窯では、幕府諸大名への贈与品および藩用品として、特別に精良巧緻な磁器の生産に力を入れてきました。日本における最も精巧な色絵磁器として賞される色鍋島はその代表ですが、青磁や染付にも優れたものが少なくありません。この大皿は染付を用いた精緻な筆使いによって、木瓜形枠の青海波文地に山水図をあらわした大変珍しい作品です。高台を高くつくり形も木杯形という厳格な規格のもとに生産した鍋島の中でも尺皿(30センチ)という最も大きい寸法の皿です。形状、文様ともに典型的な特徴を備えており、一点一画をもおろそかにしない筆法や丁寧で的確な濃み塗りは、鍋島の厳正な作風をよく示すもので本器の大きな見どころです。最盛期である元禄時代(1688~1703)ころの作品です。